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五十嵐さんは、どこまでも顧客中心を貫く。
顧客対自分という、個人同士の関係性を重視している。
前職時代から大事にしてきた想いが、屋号にも名刺にも浸透している。

屋号に込めた想い

LECTEUR(レクトゥール)という屋号はフランス語だ。
「読み手」という意味がある。
この言葉を屋号にしたのはどういう想いからだったのだろう。

「本は読み手によって捉え方が違う。書く人は読者のことを考えて書く人もいるだろう。自分たちが扱うのは本ではなく服だが、お客様のことを考えた服を提供したい。読者のことを考えて本を書くように、お客様のことを考えて展開したサービスをやりたい。そういう想いから決めました」

屋号より担当者をブランド化したい

「それでも、屋号より個人名を先に思い出してほしいので、名刺には個人名を大きく入れてますし、”代表”みたいな肩書は入れてないです」

たしかに、名刺には個人名が表に大きく書いてある。
屋号は裏に控えめに載っている。
肩書きらしきものは一切載っていない。
「あなたというお客様の担当は誰々ですよと覚えてもらえるようにしてます」

五十嵐さん写真

オーダースーツやパーソナルスタイリストという商売は始めやすい。
在庫を持たなくて済むからだ。
そのぶん競合も多い。
アプローチの差が大事になる。
「僕らが芯としてぶらさないのは、”自分たちのご提案させていただいたスタイルを身に付けることで、自分たちのまったく知らないところでそのお客様が素敵ですねと褒められるにはどうすればいいんだろうか”ということです」
そのアプローチに自信を持っている。
「こうした発想で提案したものでお客様がよそで褒められると、そのお客様は必ず戻って来てくれるんです。”誰のところでこの服買ったっけ?あ、彼のところか”って」

スタッフ自身をブランド化していきたいという想いがしっかりと貫かれている。

自分の名前で仕事をする

「前職時代も、前職のブランドの看板を外したときに自分に市場価値がどれだけ残るかを考えて仕事してました」
“このお店に買い物に来ているというより、五十嵐君のところに買い物に来ているから”と言ってくれるお客様もいたそうだ。
競合も同業も山ほどいる。
そのなかで、自分にしかできないもの、自分がやったら他が真似できないものを持つこと。
それが選ばれる人になる近道だ。

物のブランドはもうたくさんある。
物がありさえすれば売れた時代は、物自体のブランド価値が重要だった。
今は、物がありすぎて何がいいのか分からない時代だ。
個人のキュレーションのサービスが力を発揮する。

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スタイルを売るようになったきっかけ

セールススタッフとして雇用されていても自社の物にこだわらない提案をする。
その大胆なセールススタイルのきっかけは何だったのだろうか。
「洋服に興味があって勉強したんです。勉強すればするほど自社ブランドに扱いの無いものにも目が向くので実際に他社の物も買って着てみたりしました」
実際に着てみることでそれぞれの良さが分かってくる。
「物は、良くも悪くもそもそも色がついてないですよね。そこに様々に色をつけて消費者の方に提案をしていくイメージですね」

どんな商品にも背景がある。ストーリーがある。
生地。製法。ほかにない特徴。
「そういったことを知っていると、”このお客様にはああいう製品があるからうちの物を勧めるよりも喜んでくれるだろうな”と、お客様が喜んでくださるということに対して敏感になった時期がありました」
こういった経験から、スタイルを売るという五十嵐さんのスタイルが始まった。
「お客様が喜んでくれるなら自社製じゃなくても全然いいと思います」
セールススタイルへの自信が伝わってくる。

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「そういうセールススタイルの方が自分もかっこいいなって思ってたんです。変に固執しないでフラットで」
お客さんがかっこよくなってくれれば嬉しい。
かっこよくなったお客さんは周囲から褒められる。
服を買ったお店のことを問われる。
新しいお客さんが紹介で来ることになる。
相手が喜んでくれることを第一に考えることが、結果として自分のプラスになる。

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五十嵐 裕基(いがらし ゆうき)さん
 1985年生まれ。オーダーメイド紳士服販売のLECTEUR(レクトゥール)代表。南麻布に大人の隠れ家さながらのサロンを設け、紳士服をフルオーダーやパターンオーダーで販売されています。「提供しているものは服だが売っているものはスタイル」をモットーに、お客様が一番映えるスタイルを提案されています。前職は衣料品ブランドの販売員。自社の商品のみにこだわらずお客様に最も似合うスタイルを提案してきた異色の販売員でした。

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